賞与の上限はどんなルールになっているのか?
こんにちは。社会保険労務士の西田です。
私は花粉症で、苦しんでいます(^_^;)外は春の陽気でぽかぽかしています。
今日もお伝えできることがあればと思い、記事を書いています。
早速、今日は「賞与の上限」についてお伝えしていければと思います。
★賞与の上限とは
平成15年4月1日より総報酬制がとられたことで、賞与についても社会保険料が控除される仕組みになっています。
具体的には実際に支払われた賞与額(税引き前の総支給額)から1,000円未満を切り捨てた額を「標準賞与額」とし、その「標準賞与額」に健康保険、厚生年金保険料の保険料率を乗じた金額となります。※40歳以上の者は介護保険料も含む。保険料は労使折半となっています。
そのうえ、健康保険料、厚生年金保険料が関係する標準賞与額はそれぞれ上限がもうけられています。
健康保険
・年度(4月1日~翌3月31日)の標準賞与額の累計が573万円
厚生年金保険
・1ヶ月あたり、150万円
・1ヶ月に2回以上支給日が到来した時は合算
上記のようになっております。近年、社会保険料を削減する方法の一つにこの上限を用いた方法があります。
例えば、上記厚生年金保険料の1つをとっても、年間150万円を超える賞与をもらっている場合は、月ごとに2回または3回(6月や12月など)に分けて賞与を支払うより、年に1回まとめて支払ったほうが、150万円を上限とした保険料しかかからないので、お得といえます。
更に、在職老齢年金(特別支給の老齢厚生年金または、老齢厚生年金の受給権を有しながら厚生年金被保険者である者で、給与額と年金額の調整が入る者)における算定についても、その月(調整月)の標準報酬月額とその月以前1年間の標準賞与額の総額を12月で除した金額を足した額を用いて計算されることから、年に1回まとめて支払った方が、150万円を明らかに超える賞与をもらっている方は、最大150万円を12月で除した額が調整の対象となるため、お得といえます。これに月々の標準報酬月額を下げ、下げた分を賞与として支払うと…つまり、年金を多く受給し、賞与もしっかりもらうことができるのです。
善し悪しは別にして考え、上限を用いると上記のような事も可能になります。
★上限についての注意点
① 資格取得月に支払われた賞与は保険料徴収の対象となります。
② 資格喪失月に支払われた賞与は保険料徴収の対象外です。
(例:12月15日退職=12月16日資格喪失日=11月分までの保険料=12月10日支払いの賞与は保険料徴収不要)
③ 上記、②の場合においても健康保険法上、資格喪失月であっても、資格喪失日の前日までに支払われた賞与については、標準賞与額として決定し、年度の累計額(573万円の上限)に含めることとされています。
④ 育児休業等における保険料免除期間の間に支払われた賞与や資格喪失月に支払われた賞与についても保険料は徴収されませんが、健康保険の上限額に累計されます。
⑤ 同一年度内で転勤等で資格の取得、喪失があった場合、取得時の保険者と喪失時の保険者、再度取得した時の保険者が同一であれば、累計されます。
⑥ ④、⑤の場合、年度の累計が573万円を超える場合、被保険者(従業員)の申し出により「健康保険 標準賞与累計申出書」の提出が必要となります。(賞与支払額を通算させるため、年金事務所が573万円を超えていないと判断してしまい、適用事業所より保険料を徴収し続けてしまうことを避けるため)
⑦ 同一年度内で転勤等がなく被保険者期間が継続されている場合は、累計額が573万円を超えても、賞与額累計申出書の提出は不要です。
★まとめ
健康保険、厚生年金の賞与支払い時のルールについて見てきましたが、同一年度内で複数の被保険者期間があり、かつ、年度累計が573万円を超え、同一の保険者である場合、又は、育児休業等の免除期間中の賞与の支払い、資格喪失月の賞与の支払いがあり、これが累計され573万円を超え、同一の保険者である場合などは「被保険者の申し出」により、「健康保険 標準賞与累計申出書」が必要となります。建前は被保険者の申し出によるものだとしても、手続きは事業所で行いますし、保険料も事業所に請求がきます。事業所が上記標準賞与額の上限についてよく理解しておく必要がありそうです。
ここまでご覧いただき、ありがとうございました。(*^_^*)