障害者雇用について思うこと
人手不足と言われるなか、人材確保に苦慮する企業さまが多い昨今。
平成30年4月1日より精神しょうがい者に対する雇用が大きな転換を迎えました。
「障害者の雇用の促進等に関する法律」をご存じでしょうか。
この法律の中に、一般企業が雇用すべき障がい者の割合が規定されています。平成29年度までは、同法の対象障害者の中には「精神障害者」は含まれていませんでした。
平成30年度より、精神障害者保健福祉手帳を所持する精神障害者も対象障害者へ加わり、企業の法定雇用率は2.2%と引上げになりました。
2.2%とは常時雇用する労働者が100人の企業は2.2人以上障がい者を雇用しなければならないということです。
これは障害者雇用納付金とリンクしてきます。
常時雇用する労働者が100名を超える(101人以上)企業で法定雇用率に満たなかった場合、不足1人あたり原則5万円(101人以上200人以下は4万円)を納付しなければなりません。
この原資は、法定雇用率が達成し、かつ超過した人数1人あたり2万7千円を支給するというものです。
常時雇用する労働者が100人以下の中小企業の方々も、常時雇用する労働者の4%又は6人のいずれか多い数を超え雇用する事業主に対しても2万1千円の報奨金を支給することになっています。つまり、常時雇用する労働者が150人未満の企業は6人超えて雇用する必要があるということです。
さらに、精神障害者については゛特例措置゛がつきました。
平成30年度より雇用率換算(平成29年度まで0.5人としてカウントされていた)で週20時間の短時間労働の精神障害者を1人としてカウントできるというものです。※以下要件を満たす必要あり。
※新規雇入れから3年以内の者又は精神障害者保険福祉手帳の交付日から3年以内の者
※平成35年3月31日までに雇入れた者であり、平成35年3月31日までに精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた者
精神しょうがい者当事者にとっては、働く間口が広がったといえます。
一方企業としても週20時間で雇用することで1人としてカウントできるというメリットが生まれます。
精神しょうがい者の中でも福祉的就労を経てやっとのことで週20時間程度の一般就労を目指す方、最初から週40時間フルタイム勤務を望む方と様々です。一概に精神障害者保健福祉手帳を持っている方だからといって希望する働き方が全く同じとは限りません。
個人的収入面についても、福祉的就労を経て就職した方は障害基礎・厚生年金等を受給できる方や生活保護を受給されている方も多くなると思われますが、精神障害者保健福祉手帳は取得できたが障害年金は不支給だった方、なんらかの事情で生活保護を受給できない方については、当然、長い時間働いて収入を安定させたいと考えます。したがってこれらの制度と給与の兼ね合い、障がい者の能力、同僚のサポート体制等について本人としっかり向き合い検討する必要があると思われます。
そして、企業に求められるのは、第一に社内のしょうがい者に対する意識を変えることだと考えます。中でも社長自らが精神しょうがい者と継続して向き合う姿勢が大切であり、そこから得た精神しょうがい者の強みを同僚に理解してもらう、の繰り返しだと考えます。今回の法改正施行により、週20時間以上であれば1人としてカウントされ入口は障がい者、企業共に広くなりました。問題は、入口に入った後、どれだけ一歩踏み込んだ個別対応ができるかが、精神しょうがい者の強みを経営に活かす最大のポイントだと考えます。
精神しょうがい者を雇用(予定)する企業は、単に、法定雇用率を達成する、人手不足を解消する、という目的だけではなく、そこから踏み込んだ人事政策が問われてくると思われます。