パワハラの法的性質について。
職場のいじめや嫌がらせ。
福祉事業所で、いじめや嫌がらせが始まるきっかけになるのは以下のとおりです。
① 仕事の方針のズレ。
② 利用者様とのトラブル。
③ 各専門職の専門性の高さ。
福祉・医療はチームで一人の利用者様を支えます。チームで動くということは、人と人の連携が多く発生します。
連携の仕方は各々の事業所で異なるとは思いますが、他職種、上司、同僚、利用者様との連携部分でトラブルが発生した場合、いじめや嫌がらせに発展する可能性もあります。
では、このようないじめ嫌がらせは法的な根拠があるのか。言い換えると、パワーハラスメントに法的根拠があるか。
これは、セクハラ(男女雇用機会均等法)やマタハラ(男女雇用機会均等法(妊娠・出産に関するハラスメント)、育児介護休業法(育児・介護に関するハラスメント)と異なり法的根拠がないのが現状です。
では解決はどうするのか…
民事(暴行や脅迫になると刑事)となるわけです。
民事事案として、扱われる法律は民法。
会社、いじめをした者に対して発生する、民法709条(不法行為)が中心となります。いじめをした者に対して不法行為が成立した場合、民法715条(使用者責任)も問われます。
また、会社がいじめや嫌がらせを放置していた事で損害が発生した場合、民法415条(債務不履行)、労働契約法5条(安全配慮)を問われます。
これらは、一部問われる可能性もありますし、全責任が課せられる可能性もあります。
厚生労働省管轄の行政機関(労働局)は、法的に根拠がなければ行政指導を行うことができません。
したがって、パワハラに関する予防啓発活動は行うが、実際の終局的解決は裁判上の手続きを勧めているのが現状です。
しかし、労働局にも、、、
総合相談窓口が設置され、このようないじめや嫌がらせの事案に対して、労働者が会社に対して何らかの対応(話し合いの場を設ける、いじめをした者に懲戒処分をする、配転命令等)を求めたのにもかからわず何もしなかった場合、口頭助言を実施してくれます。
口頭助言は文字通り「助言」ですので、行政指導とは全く異なり、会社と労働者との話し合いを促進するためのものであり、決して法違反を問うものではありません。
もう1つあっせんという制度があります。
あっせんも口頭助言と同じく基本は話し合いによる解決を目指す制度です。
イメージとしては、相撲の土俵を労働局が準備するようなものです。
相手の参加は任意です。
相手が土俵上にのってこなければ、相撲をとることもできません。話し合いもできないのです。
解決方法は原則、金銭解決です。
いじめや嫌がらせを受けたこと、それに対して会社が何も対応しなかった事で被った精神的損害、経済的損害などを実際に妥当な金額(民事事案ですので額は問われません)を労働者が会社に請求します。この請求金額を巡って話し合いをしていく場を労働局が提供するイメージです。
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